健康への影響がない、新しいリサイクルルール
原子力発電所の運転終了に伴う廃炉作業(以下、廃止措置)や運転の過程では、さまざまな廃棄物が発生します。これらは放射能レベルに応じて厳格に分類・管理されますが、その中には放射能レベルが極めて低く、人の健康への影響が無視できるレベルのものが含まれています。
これらを「放射性廃棄物として扱う必要のないもの」として、産業廃棄物と同じようにリサイクルや処分ができるようにした仕組みが「クリアランス制度」です。この制度は2005年の「原子炉等規制法改正」によって定められました。
- 安全性の基準
クリアランスレベルとして設定されている基準は「年間0.01ミリシーベルト」です。これは、私たちが自然界から受ける放射線(日本平均で年間約2.1ミリシーベルト)の100分の1以下に相当する数値です。 - 国による厳格な確認
事業者が対象物の放射能濃度の測定・評価方法を国に提出し、国による測定・評価方法の認可する第1段階、事業者が対象物を測定・評価し、さらに国(原子力規制委員会)がその結果を確認する第2段階を経ることで、初めて「クリアランス物」として認められます。このプロセスにより、初めて一般の産業廃棄物と同様にリサイクルが可能な資源になります。
▽ もっとくわしく ▽
廃炉からのゴミをリサイクルできるしくみ「クリアランス制度」[経済産業省 資源エネルギー庁]
クリアランス金属とは
廃炉作業を支える、再利用可能な「資源」
「クリアランス金属」とは、原子力発電所の解体作業などで出る廃棄物のうち、クリアランス制度によって安全性が確認され、リサイクルが可能となった金属(鉄やステンレスなど)を指します。
もともとは発電所内の建物や機械の一部であった金属ですが、細断や表面加工され、入念な検査をクリアしたものは、リサイクル資源へと生まれ変わります。私たちの身の回りにある鉄製品の約50%がリサイクル品であるように、クリアランス金属もまた、新たな製品への材料として期待されています。再利用されている例として、側溝のふたやベンチ、サイクルラックなどがあります。
現在、国内にある原子力発電所52基のうち、26基が廃炉となっており、そのうち4基からクリアランス金属が排出される解体フェーズに入っています。クリアランス金属の多くはリサイクル先が十分に確立されておらず、発電所構内に保管されているのが現状です。
図参考:福井県 令和5年度クリアランスパンフレット「はじめましてクリアラン金属です」より

▽ もっとくわしく ▽
クリアランス制度とは[電気事業連合会]
福井県 令和5年度クリアランスパンフレット「はじめましてクリアラン金属です」
福井県での取り組み
次世代と共に考えるリサイクルの未来
福井県には、15基ある原子力プラントのうち、7基が廃止措置となっています。県は制度への理解を深めてもらうため、実際のクリアランス金属を用いた製品づくりを手がけています。そのひとつの取り組みとして、敦賀工業高校と福井南高校の生徒たちが、それぞれの学校でクリアランス金属を再利用した実用的な製品を製作をしています。
しかし、依然として世間一般の認知度は低いのが実情です。福井南高校が2024年に行った「高校生の原子力に関する意識調査2024」において、福井県内の高校生であってもクリアランス金属について「知らない」「あまり知らない」という回答が8割を超えています。
クリアランス金属は、単なる廃棄物ではなく、これからの社会を支えるためのひとつの「資源」です。クリアランス金属が発電所構内にたまり続けることは原子力発電所の廃止措置の進捗を妨げることとなります。この状況を福井南高校の生徒たちは「長期的な視点に立つと、将来世代への課題の先送りにもつながる」という意見を述べています。この制度を皆が正しく知り、活用していくことが、未来の社会に向けた本当のリサイクルなのではないでしょうか。
▽ もっとくわしく ▽
福井県におけるクリアランス金属の再利用に関する取組み[福井県]
もっと知ろう、放射線のこと、クリアランス金属のこと
高品質な「血統書付き」の金属資源
原子力発電所で使用されている金属資材には、原子力発電所内のどこで使われていたどのような材料なのかが分かる管理がなされています。そのため、成分がはっきりしているので、使いやすい金属(=高品質)であると言われています。
生活の中で受ける放射線、ご存じですか?
医療(CTなど)から 3.9mSv
暮らしの中で 2.1 mSv
クリアランス物 0.01 mSv
mSv…マイクロシーベルト
出典 『放射線リスクに関する基礎的情報』2023年1月(第13版)(発行:復興庁など)P15
世界では、特別ではない
ドイツでは他の金属と同じようにごく普通にリサイクルされ、社会の中で当たり前に使われています。ドイツ以外でも用途を事前に限定してリサイクルしている国もあります。