当校では2021年度から原子力発電に関する学習活動を開始し、翌2022年度にクリアランス金属のリサイクルの可能性を知りました。
通学路の課題から生まれたコンセプトと製品と
プロジェクト発足の背景には、通学路の課題がありました。学校から最寄り駅までの道には街灯がほとんどなく、夜になるとスマホのライトを照らしながら帰宅する生徒もいました。周囲を田んぼに囲まれ歩道も整備されていないため、誤って田んぼに転落する事故も発生していました。
さらに近隣に配送センターが新設され、大型トラックの往来が頻繁になったことで、交通安全への懸念が高まりました。これらの課題に対し、「クリアランス金属を活用して解決できないか」と考えたことが、製作活動が始まりました。
本活動は、2022年度からの「総合的な探究の時間」を活用して行われています。福井南高校では大学と同じようなゼミ形式を採用しており、クリアランス金属のリサイクル活動は「浅井ゼミ」に所属する生徒たちによって運営されています。
福井南高校の生徒たちが、どのようにクリアランス制度への理解を深めていったのか、具体的な学習プロセスは次の通りです。
現地見学会の実施
原子力発電所や、実際に製品の鋳造を担う企業を何度か訪問しています。製造の現場を直接目にすることで肌で感じる貴重な機会となっています。
交流活動
防犯灯を設置した他校との交流会を開催してます。また、例年、電力の最大消費地である東京都内の高校を訪問しています。
エネルギー勉強会
生徒たちが専門家の方からオンラインや対面でエネルギーに関して話を聞き意見を交わす勉強会をしています。
2021年に日本原子力発電株式会社より寄贈された「クリアランス金属を用いたベンチ」が校内に設置されており、日頃からその質感や安全性に直接触れられる環境があることも自然な理解に結びつきました。
教科学習と社会を往還する学び
本活動を通し、指導教諭から見ると「生徒たちが教科学習と実践的な探究を自由に行き来(往還)して思考し、実践している」点が印象に残っています。
街灯を設置するにあたっては、鋳造工学だけでなく、照度や色温度の計算、道路行政、設置コストの試算など、クリアランス制度に留まらず広範な知識が求められます。活動が進むにつれ、中央大学や東京大学のオンライン聴講生として経済学や工学を学び始める生徒も現れました。
クリアランス街灯を入口としてさまざまな領域に目を向けて学び、「原子力×教育学」「原子力×社会学」というように、自分で方向性を組み立てて実践する、と行動変容は、大きな教育効果であると感じています。
全国へ広がる『花灯-HANA AKARI-』の灯火
日本で初めてクリアランス製品を公共インフラ(街灯)として通学路に設置されたニュースは多くの方の目に留まり、放送直後には県外の区長会から「ぜひうちの自治会に設置したい」と電話をいただくなど、関心の高さを感じました。
地元の方からも「道が明るくなったので高齢者も安心して外出できるようになりました」という声をいただきました。
クリアランス制度を用いた活動は、単なる「探究」の枠に留まらず、さまざまな教科学習に活用できると考えています。例えば「公共」の授業では、公共空間における意思決定や合意形成のあり方を学ぶ切り口として、さらには地層処分問題までを視野に入れた深い議論の入り口として活用しています。他にも「理科」の放射線教材、「家庭科」のエネルギー、さらにはデザインや鋳造といった専門領域まで、生徒の興味・関心に合わせて無限に射程を広げることが可能です。ものづくりの視点から地域経済や産業を捉え直し、福井県の、そして日本の未来を多角的に考える教育実践になっています。